せんなん堂主人 日々の思うこと

読書、音楽、TV映画鑑賞から感じたこと、思うこと

剣と紅/高殿円

せんなん堂です。

 

ちょっと音楽のことが続いたので、今回は読書感想を。

 

今年のNHK大河ドラマは、「おんな城主 直虎」で、井伊直虎という女性の話ですね。

www.nhk.or.jp

  井伊直虎は、のちの徳川四天王の一人、井伊直政の養母で、井伊家断絶の危機に家督を継いだ女性、と言われています。

ただ、直虎に関する記録は少なく、実は男性だったと主張する人もいることは、大河ドラマが始まる直前にニュースとなりました。

 

「剣と紅」は、井伊直虎の幼少期から、彼女の目を通して井伊家に起こる苦難とそれを乗り越えてゆく過程を描いた歴史小説です。

 

井伊家は、平安時代から遠江井伊谷を治める名門だったが、直虎が生まれたころは、当時の東海地方の絶対的強者であった今川氏支配下にありました。今川氏は、口実を設けては、直虎の父、祖父、叔父、叔父の息子でフィアンセらを処刑、また、戦に駆り出し前線へ送り込んで戦死させ、力を削いでいきました。

また、家老である小野家が、今川のスパイ的な役割をしつつ、主家を乗っ取る機会を虎視眈々と狙っていました。

この絶望的な状況が切なく感じます。

 

非常に厳しい状態で、直虎がどのようにして家を守り抜くのか、一度は小野但馬守道好に城を取られてしまうが、それをどのようにして取り戻すのか、そして、戦乱の世でどのようにして井伊家の安泰を図ったのか、が読みどころです。

史実に関する記録が少ない人物を主人公とした物語の良いところは、作者の創作の部分が多く盛り込めるところにあります。

著者の高殿円氏は、直虎には霊感があって、人の運命がわかるという人物設定にして、戦国の世の井伊家の物語をドラマチックしています。

 

 大河ドラマおんな城主 直虎」の原作は、てっきり「剣と紅」だと思っていたのですが、調べてみると”森下佳子氏がドラマのために書き下ろしたもの”とのことです。