アルヴェーン 交響曲第2番ニ長調作品11
ヒューゴ・アルヴェーン(1872-1960)はスウェーデンの作曲家です。
私は、次のエピソードから、この人は、人間臭いなあと思いました。
アルヴェーンは、交響曲第2番を作曲していたころ、スウェーデン王立音楽アカデミーに奨学金延長の申請をするため、作曲中の交響曲の最初の3つの楽章のスケッチを送ります。
ストックホルムの海辺で作成した、光とハーモニーにあふれる素晴らしいスケッチだったそうです。
しかし、申請は却下され、奨学金をストップされてしまいました。
彼は申請却下を知り、失望し、自信を失います。
実際には、奨学金延長の申請には毎年完成した作品の提出が条件であり、彼はそのことを数か月後になって知るのです。
この申請却下事件により、アルヴェーンは怒りとリベンジに燃えます。
”作曲の仕方を知っていることをあいつらにみせつけてやろう”
とばかりに、渾身のプレリュードとフーガ挿入し、曲を完成させます。
交響曲第2番は、1899年に初演され、大成功を収めます。
そして、止められていた奨学金が、再び支給されることになります。
曲は、5つの楽章からなります。
第一楽章は、非常に美しく、軽やかな優雅な雰囲気です。行ったことはないのですが、北欧の穏やかな晴れた日の海辺をイメージされます。
ところが第二楽章からは雰囲気が変わります。
どうも第一楽章を書き終えたところで、奨学金延長申請が却下されたようです。
そして、最終楽章の渾身のフーガは、力強く聴きごたえがあります。
一曲の始まりと終わりで、これほど雰囲気が変わってしますのも珍しいのではないでしょうか。
曲中に作曲者の感情が反映された、この人間臭さが、私は好きです。
私が聞いたのは、上記の盤で、これもアルヴェーンの代表作ですが、スウェーデン狂詩曲第一番「夏至の徹夜祭」が収録されています。
「夏至の徹夜祭」もいいですね。北欧の白夜の中の祭りの様子が描写されています。
アルヴェーンは、作曲だけでなく、ヴァイオリニストとしても知られているそうですが、若いころは、画家になるか音楽家になるか悩み、悩んだ末に音楽を本業としたのですが、交響曲第二番や「夏至の徹夜祭」は、画家も志した彼だから作り出せる絵画的な美しさがあると思います。
(参考資料)
2)アルヴェーン 交響曲第二番ほか、別冊解説書