せんなん堂主人 日々の思うこと

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本能寺の変

戦国時代、明智光秀という武将がいました。

織田信長に仕えていた有力家臣であった光秀は、1582年6月、京都、本能寺にいた主君を討ち果たしました。かの有名な本能寺の変です。

 本能寺の変は、謎の多い事件です。

なぜ、光秀は信長に謀反を起こしたのか?朝廷黒幕説、秀吉黒幕説、家康黒幕説、いや単純に、当時の武将の気概として、狙える時に天下を狙いたかったんだ、という説まで、様々なことが言われていますが、真相ははっきりしていません。

数年前、光秀の末裔である明智憲三郎氏が、一次資料を丁寧に調べ、その情報と、多少の推理を加えたものを上梓しています。(明智憲三郎 『本能寺の変四二七年目の真実』)これもなかなか面白かったのですが、今回は次の本を紹介します。

 

光秀の定理

垣根涼介

 

これは歴史小説ですが、話は光秀の主君であった斎藤道三が討たれ、放浪し、京で細川藤孝のもと、将軍に仕えている状況から始まります。癖の強い二人、若き兵法者新九郎、愚息という坊主や、光秀を支える妻煕子(ひろこ)などの魅力的な登場人物とともに、光秀が織田家への仕官とその後の急激な出世までの活躍を描いています。

 

題名の「定理」とは、愚息がサイコロの博打をするのですが、なぜ愚息はいつも勝てるのか?その理由がこの「定理」であり、この「定理」は博打だけでなく、光秀の戦や人生の岐路でも関係してきます。そのような大きなつながりがあるところが面白いと思います。

 

私は、この小説の最後の章、光秀が本能寺の変で信長を討ち、その後、中国大返しをしてきた羽柴秀吉と戦って敗れるところを、新九郎、愚息の立場から書いているところが一番いいと思います。

秀吉が天下を統一して、とりあえず戦のない世、としたが、新九郎、愚息には何かざわつくものがある。そして、光秀がなぜ信長を討ったのかを二人で真剣に考え始めます。

光秀は、信長の合理的な考えに共感し、それを理解して、信長の期待に忠実にこたえていきます。しかし、考え方に決定的違うところがあった・・・。

 

本著「光秀の定理」は、最近の、本能寺の変明智光秀に対する評価、これまでの通説とは異なる説、それをサポートする資料が出ている中、これらをうまく取り入れ、光秀を違ったとらえ方でうまく表現し、エンターテインメント性のある構成にしたすばらし作品だと思います。おすすめです。